日本インテリアプランナー協会

2018審査結果

橋本夕紀夫賞

作品名称:『HondaイノベーションラボTokyo』
応募登録者名:山野辺 学
応募カテゴリー:オフィス

審査講評(橋本夕紀夫)

 昨今、オフィス環境はめまぐるしく変化している。以前はそれぞれのスタッフの定位置を決めて効率よくデスクを四角四面に配列したり、ブース型にするオフィスが一般的であったが、最近ではそれにとらわれずにフリーアドレスにして各スタッフがフレキシブルにデスクを使うケースや、一見カフェのようにも見える環境づくりがなされるケース等、多様な考え方のオフィスが増え続けている。その背景にはPCやタブレット駆使することによってペーパーレスで仕事が進められるので常に身の回りにものを保持する必要がなくなってきていることがあげられる。それと同時に働き方に自由を与えようという意図によるものであろう。しかしそのようなオフィス環境がすべてのスタッフにとって本当に仕事のしやすい有意義なものかどうかは疑問に残る。実際私もそのようなオフィスをいくつか訪ねたことがあるが、自分の居場所が特定されないと落ち着いて仕事ができないという人も結構多い。
 そのような状況の中でこの「Honda イノベーションラボ Tokyo」は非常に良い解答をだしている。ワーキングエリアにグリッド状の木の柱と梁を配置することによって、オープンであると同時に個々の居場所を作り上げることに成功している。さらに、このフレームを利用していろいろなものを引っ掛けたり立て掛けたりできるので、フレキシブルな使い方ができる。その他ミーティングエリアも壁を作らずに床と天井のカラーリングを全体環境と変えることによって、オープンなのに一つの場の雰囲気をつくりだしている。そのような工夫がなされることによって、非常にオープンでフレキシブルな環境であるのにも関わらず、それぞれのスタッフが自分の場作りもできるオフィスになっている。
 優れたオフィス空間は、それぞれの人がコミュニケーションを円滑にとることができ、なおかつ仕事に集中できるパーソナルな場を持つことも必要である。この「Honda イノベーションラボ Tokyo」はユニークな手法によってそれを成し遂げているといえるだろう。

HondaイノベーションラボTokyo