IPA2022 審査結果発表

審査講評  
志村美治 審査委員長
志村美治(第5回IPA特別審査員賞受賞)
今年度の作品には、環境が要求するベクトルが年々複雑化する中、社会・人々に対してなすべきことへの答えを、一つのプログラムを提案することでシンプルに分かりやすく伝えようとしている姿勢が多く見受けられた。
 受賞作品は、9作品となり様々な環境・条件下での問題解決が行われ、インテリアプランニングが広い領域に存在しこれからも拡大していく事を、改めて実感した。
 最優秀賞は、3作品であり確かな力量で造り込まれている。
 ●森厳なる誓いの場:絞り込まれた素材での、深く緻密な表現力
 ●お寺のホテル:積み重ねた時間と、これからの時間をつなぐ構成力
 ●オンリーワン・カスタムルーム:ビジネスメソードを、機能美に昇華させた構築力
これらの作品には、「華」がある。
しかしながらそれは、実直な調査・実験・検証に裏打ちされ、関係者への説明を繰り返し行なった中で生まれ出た事を感じさせる。
 これらの空間に触れた人々は、理屈を超えて胸襟を開き、そこからのメッセージを聞き取ることが出来ることだろう。
 
原 兆英 審査委員
原 兆英(第4回IPA特別審査員賞受賞)
真の評価は未来にこそある。
 空間を考えるとき、「環境・社会・人間」という考えるべき視点がある。それぞれ言葉の前後に、自然、地域、経済、生活、機能、感性などを付加すると空間創造につながる要素が見えてくる。さらに、今後はSDGsが提唱する持続可能な開発思想が空間にも求められている。
 今回の最優秀賞3作は、そうした意味では十分な仕上がりといえる。厳かな礼拝堂に横溢する古都の老舗ホテルの矜持、ホテルと寺院再建を文化継承と融合させる思想、無垢木材のショールームが醸す人間への視線、いずれも甲乙をつけ難いものだった。惜しむらくは、抜きん出た一作を絞りきれなかったことだ。審査員の想像を超える驚きが欲しかった。想いもよらない新鮮さと出会いたかった。それは欲張りな考えだっただろうか。
 本賞を受賞した関係諸氏には賛辞を送りたい。が、あくまでも賞は賞であり、真の評価はそれぞれの空間の未来に委ねられる。空間は使われて変化し、価値が見出されるはずなのだから。
 空間には、社会がかかえる課題解決や未来への提起など、果たすべき多様な役割がある。その意味では、大きなプロジェクトの空間ばかりを評価の対象とはしたくない。作品の大小は問わないし、小規模だからこそ濃密なコンセプトを込めることもできるはず。次回はそうした秀作とも出会えることを願っている。それが空間づくりの醍醐味であり、審査員の喜びでもあると信じている。
 
花澤裕二 審査委員
花澤裕二(日経デザイン編集長)
 インテリアプランニングアワードの審査に初めて参加させていただきました。審査に当たって特に意識したのは、日本が置かれている現在の環境です。サステナビリティー(持続可能性)、少子高齢化による人口減、コロナ禍を経た後の新しい働き方や住まい方──難しい社会課題を幾つも抱える現在、あらゆるデザイン領域でこれらの課題へ配慮し、何らかの解答を示すことが求められています。インテリアプランニングにおいても同じでしょう。
 今回のアワード応募作には、これらの社会課題に真摯に向き合おうという意識が見られました。最優秀賞に選ばれた3作品は、その中でも特に、「美と利と知」を高い次元で融合させたものだと感じました。ちなみに「美」とはインテリアプランニングの美しさや完成度。「利」とはベネフィットの意味で、機能性やコスト。「知」は知性で、社会的使命を正しく果たそうとする姿勢です。
 これら3つはなかなかそろわないものですが、3つの最優秀賞作品にはそれがありました。インテリアプランナーの皆さんには、「美と利と知」を体現するようなプランニングを、これからもどんどん送り出していただきたいと思います。
 

 

最優秀賞

優秀賞

入 選