IPA2025 審査結果発表

審査講評  
原 兆英 審査委員長
原 兆英(第4回IPA特別審査員賞受賞)
 2025年、本賞に多数の力作を寄せていただいことに心より感謝申し上げます。今年の応募作は、「高齢化社会」「サステナビリティ」「インフラの老朽化」といった、現代社会が直面する社会資本の減衰という重いテーマに真摯に向き合ったコンセプトが多数を占め、未来への強い責任感を感じました。
 最優秀賞となった[第2名古屋三交ビル]は、中規模ビルであっても高層ビルの都市化に引けをとらない可能性を求めつつ、屋内公開空地のデザインとして、土地の有効活用と公共空間の可能性を見事に提示しました。しかし、ここで私たちが改めて問いたいのは、インテリアデザインがもつ真の力です。
 今日のデザイン課題の多くが、建築計画という大きなフレームから発想されています。確かに、最優秀作のように社会変革に直結する開発や建築プロジェクトは重要です。しかし、本来インテリアデザインが担う役割は、内部空間における「関係性のデザイン」、つまり社会や人間と結びつくことであり、建築の制約下でクリエイティブな幅が狭まるものであってはなりません。私たちが期待するのは、「小さな空間」がもつ無限の可能性です。たとえ一室、あるいは一角のデザインであっても、既存の建築や社会のシステムを転換させる近未来への有用な解や深い示唆を内包できるはずであり、そうした応募がもっと増えることを願っています。
 社会課題の解決は、巨大なインフラからではなく、人が日々触れる最小単位の空間から生まれる新しい振る舞いや気づきによってこそ成し遂げられます。来たるべき未来に向け、インテリアデザインがその本質的な役割を深く掘り下げ、新たな価値を創造する担い手となることを強く期待します。
 
池貝知子 審査委員
池貝知子(株式会社アイケイジ―代表取締役)
 今回、インテリアプランニングアワードの審査に初めて参加し、全体を通じて建築デザインと内装デザインの境界がより溶け合い、両者の距離が縮まっていることを強く感じました。
 最優秀賞に選ばれた第⼆名古屋三校ビルは、地域材である三重県産の⽊材を使⽤し、家具から発⽣したかのように空間全体へと広がっていくインテリアを実現しています。⾼さ10 メートルのダイナミックなエントランスは、美しい曲線が連続し、外から⾒ても巨⼤なアートのようで、内部に⼊れば椅⼦が有機的に伸びて、壁から天井を覆って森の空気を醸すかのようです。照明効果とシームレスな構成が相まって、シンプルに⾒えながらも完成度の⾼い作品でした。
 さらに、建築から内装へと影響を与えるのではなく、⼈の⼿が触れる家具というスケールから空間を⽴ち上げている点が、まさにインテリアプランニングアワードにふさわしいと感じました。
 多くの応募作が強いコンセプトを打ち出す中で、この作品はコンセプトも明快ながら、「⻑くそこにいたい」「わくわくする」という体験を⾃然に引き出し、インテリアの本質的な魅⼒を改めて⽰していたことが印象的でした。
 
山下奉仁 審査委員
山下奉仁(日経デザイン編集長)
 特別奨励賞に選んだ「BEAUTY INNOVATION FACTORY」は、個人的に最も引かれました。地元の名産品である葦簀(よしず)をモチーフに、無数の穴が開いた鋼板を工場の正面に配置。強い日差しを遮断しながら、水のゆらぎやきらめきのような柔らかい光が工場内に差し込むようにデザインしています。見た目のインパクトが大きいだけでなく、働く方々が毎日を心穏やかに過ごせそうな印象を受けました。
 インテリアプランニングアワードの審査は昨年に続いて2回目ですが、「これは建築なのか、インテリアなのか」という点で議論が白熱しました。上記の作品もジャンル的には建築だと思いますが、施設内の空間をどうデザインするかという点でインテリア的な発想も多分に発揮されています。
 日経デザインで日々取材をしていると、デザインの領域がかつてないほどボーダレス化しており、事業開発の初期段階からデザイナーが参加することも増えています。空間デザインも、建築なのかインテリアなのかを問わず、インテリアプランナーが主導することで新たな可能性を見いだせるのではないでしょうか。
 

 

最優秀賞

特別奨励賞 山下奉仁賞

優秀賞

入 選

協賛企業

株式会社オカムラ / ボーコンセプト / スタジオノイ株式会社